今日は約束通り、やっくんと加古川に「かつめし」を食べに行った。
初めてJR神戸線・加古川駅前エリアに足を踏み入れた。
これまでは郊外の店ばかりであった。
本来なら、駅前エリアは電車で行くべきところ、
愛車のエンジンを回すのを兼ねて、いつものように
第二神明→加古川バイパスのルートをたどった。
それにしても加古川は、加古川バイパスという
高速道路ではないものの、アウトバーン並みの?車速が維持できる
無料の自動車専用道路が街のド真ん中を東西に突っ切っている。
車にとっては実にアクセスのよい街である ♪
三宮から食事をして3時間で悠々帰って来られる。
今回選んだ店は「旭食堂」。
加古川市加古川本町363
明石バイパス・加古川ICから数分。
加古川駅から徒歩約10分。
0794・22・2804
営業時間は1100~1900(ごろ)
木曜定休
「加古川かつめし」ファンとしては、外せない老舗の一つである。
JR線の南側・寺家(じけ)商店街アーケードを西に向った外れ。
大河・加古川の川に近いと言った方が分かりやすいかもしれない。
店の前に若干の専用駐車場あり。
超の付く「かつめし」ファンなら、電車なり車で来て、
車ならJR加古川駅前南側の「ニッケパークタウン」の
巨大駐車場に駐車。
駅周辺に数え切れないほどある名店をハシゴすのも楽しいだろう(^^
加古川はニッケ(旧日本毛織)の企業城下町。
110年前にこの地に最初の工場を構え、毛布の生産を手がけた。
味は、、、ライス、カツ、ソースが喧嘩せず調和した完璧、
と言えるものであった(後段で詳述)。
店構えも私がこよなく愛する、暖簾がバシッとかかっている、
レトロ感覚満載の大衆食堂である。
壁に掲げれたメニューには、うどんや丼もの、
焼き飯から日替わり定食まである。
心の中でうめいていたであろう(笑)
手前が奥様で、我々のかつめしを準備してくれている。
奥では、ご主人が黙々とカツを揚げている。
軒の色あせた「旭食堂」の文字と、暖簾、のぼりがいい風情でしょう?
そして、ご主人の表情。
柔和でありながら、奥に秘めた「かつめし」への情熱を感じた。
肝心の味である。
やっくんはジャンルの違う中華とはいえプロの料理人である。
2人で、あーだ、こーだと感想を交わしながら、平らげた。
カツは薄くも厚くもない「正統派」。
牛肉、衣、ソース、ライスはまさに渾然一体。
一部ブログでは「甘口」とも評されるが、そんな一言では語れない。
ソースに独特の深みがあり、後に引く甘さは全く残らない。
余談だが、かいがいしく継ぎ足される麦茶が
抜群の美味しさだったことにも触れておかねばならないだろう。
大体のレシピ(隠し味まで含めて)は判別できた。
当の調理人の話が聞ければ、間違いない、、、と案じていたところ、
実に気さくなご主人が仔細を明かしてくれた。
隠し味の調味料である。
ご主人が「ルー」と呼ぶ、ブラウンソースには、
ザ・ブレンド114と117の粉が使われてた。
114は柔らかな味、117は苦味の残るコクが出る。
カレーでインスタントコーヒーを味の締めに使うことはよくある。
ここのかつめしにも使われていたのか、、、
我々が判断したウスターソースは当たっていた。
醤油と合わせて名古屋から取り寄せている特製品。
ワインや胡椒、その他の数え切れない調味料を駆使しているともいう。
一番面白かったのは、ご主人が以前、
体調を壊して店に出られなかった時の逸話である。
店を閉める訳にもいかないので、
レシピを紙に書いて伝え、奥様が作って出前をしたという。
ところが、客が一言。
「ご主人は今日はお休みなんですか?」
つまり、レシピ通りに作って、ご主人の味は再現できたようで、
常連客の舌はそれを瞬時に見破った、というのである。
ご主人が続ける……
「このルーは50年前に店を始めた
オヤジの跡を引き継いだときからの味なんです。
体で覚えた味はレシピでは再現できません。
だから、私はお客さんに問われれば、レシピは隠しません。
同じように作っても、この味は絶対に出ませんから。
企業秘密でも何でもない。隠す必要はないんです」
この言葉には長年取材を経験した私も感銘を受けた。
時折見かける。
「てやんでぇ~、オレの味が気に入らなけりゃ出て行け!
勘定なんか要らねえ。金を貰わなければ客でもねえ!」
などとホザく、特に新興ラーメン店辺りの「頑固オヤジ」が。
こうした、食べ物を作る資格すらない、新米主婦にも劣る
単なるアマチュア料理人に、この言葉を聞かせたい。
加古川かつめし探訪はまだ緒に就いたばかりだ。
それでも行く店々で、必ず主人に教えられる教訓がある。
それは食べ物における教訓には留まらない。
多くは人生紀行においても通用する至言ばかりなのである。
私の、かつめし紀行は終わることはないであろう。
付記:
加古川かつめしの発祥は調理人のまかないにあるらしい。
「一休亭」のご主人からもその話は聞いていた。
「旭食堂」のご主人によると、戦後に生まれた食べ物という。
最後にご主人の一言。
「かつめしもビフカツでなく豚で作れば
400円ほでで出せるんですがねえ、、、
加古川のカツメシは牛の味でないとダメなんです。
カツも厚けりゃいいというものでもない。
ササッとかきこめるのが加古川のかつめしの本来の姿です」
RICOH GR DIGITAL Ⅱ(RAW)
SILKYPIX Developer Studio Pro
近日中に始めると予告したコラムを、この回より不定期で幕を開ける。
【Jの法則】と命名した。「J」は単に私のHNの頭文字である。
【Jの法則-1】
食べ物との出会いは、人との出会いと何ら変わるところがない。
食べ物は人間が積み上げてきた文化の結晶である。
食べ物をただの「栄養補給源」になぞらえる荒俣宏氏などは、
残念ながら博物学の深淵には永遠にたどりつけないであろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿