「週末のお天気は、あいにく下り坂のようです」。テレビのお天気キャスターの表情が申し訳なさそう。統計ではなぜか、東京、大阪では、週末に雨の降る確率が高い。元日本気象協会技師の森田正光さんは「平日の都市活動が、週末に雨を降らせる」と推測する。一方、気象庁気象研究所の藤部文昭さんは「たまたま 低気圧が集中したからだろう」と反論する。週末の都会に集中する雨は誰の、何のしわざなのか。
まず、森田さんのデータ(表=略)をのぞいてみよう。東京・大手町のビジネス街で、80年から91年の12年間に、1ミリ以上の雨が降った日数を曜日別にまとめてある。
月曜から木曜の平日に比べ、金曜と土曜日の雨が多い。森田さんは明治時代(1901~05年)のデータも調べたが、こちらは曜日による明らかな差はなかったという。
この3月まで日本気象協会解説予報課の技師として、毎日、テレビで天気の解説を担当するなどの約20年の体験から、次のように分析している。
東京では月曜に急激な都市活動が始まる。都心から富士山を観測しても、一番、富士山が見通せるのは日曜で、月曜からは日を追って見えにくくなる。都市活動が発生させる小さなチリやごみが、上昇気流で上空に舞い上がり、雲粒から雨粒に成長し、週末に雨を降らせる。最近の12年間、日曜の雨降りが少なくなっているのは、土曜休日制の広がりのせいかも知れない。明治時代にそんな傾向が見られなかったのは、都心に人やクルマが今ほど集中していなかったためだ--というのだ。
水と大気が織り成す気象現象を地球規模で観測・分析している名古屋大学水圏科学研究所長の武田喬男教授は、都市とその周辺部の雨の降り方の違いに注目している。50年代まで、東京、新潟、名古屋では、降水量1ミリ以下の「微雨」が年間30~40日降っていた。それが、少し離れた周辺部では20日前後に減る。
武田さんは「都市活動で大気中に大量に放出された汚染粒子の一部が、雨のもとになる雲粒の核の役割を担う」とみる。ここまでは森田説と同じだ。ところが 「たくさんの汚染粒子が決まった量の水蒸気を分け合うため、個々の雲粒が雨粒にまで成長しにくい。その結果、雨は降りにくくなるか、降っても微雨どまりになるはず」と、逆の結論になる。
武田さんは、雨の降り方の違いは「低気圧の襲来だけでは説明できず、人間の営みが大きく関係していることは間違いない」と警告する。
気象庁広報室は「曜日と雨降りの相関関係の調査は気象庁の業務にないので、コメントはできません」というが、都会人の多くが感じている「週末はなぜか雨降り」はどうも気になる。
大勢の「お天気博士」を擁する気象庁だが、曜日と天気の相関関係を主テーマにしている研究者はいない、という。そこで、都市部の平日と週末の気温差などについて論文を発表している気象庁気象研究所予報研究部(茨城県つくば市)の藤部文昭さんを訪ねた。
「森田説」を客観的に検討するため、スーパーコンピューターで全国100カ所を超える観測地点の、ここ30年間の降雨日数(降水量1ミリ以上)を曜日別に集計してもらった(表=略)。
東京では、土、日の雨降りが突出している。大阪は金、土、日に、やはり雨降りがめだつ。
藤部さんは「週末の降雨日数が平日に比べて多いのは、統計学でいう『ばらつき』の範囲内だろう。たまたま週末に強い低気圧が多く通ったため、と考える方が合理的。現時点で都市活動と結びつけるのは難しいのでは」という。
ただ「平日の降雨日数がほぼ一定しているのに、週末が目立つのは、東京周辺だけの特徴といえそうだ。台風など、純粋な低気圧による雨を差し引いて、コンピューターで模擬計算できれば、面白い結果が出るかも知れない」という。
4月25日に投稿した「都会の週末はいつも雨降り?」の
根拠となる記事だ。
某全国紙に十数年ほど前に掲載された。
いささか古い記事ではあるが、私自身の取材・執筆によるものである。
私は「森田・武田説」に信憑性があると感じる。
と同時に気象庁の専門家の説も否定はしない。
ともあれ、このGWは全国的に好天に恵まれそうだという。
さて、皆さんはどうお考えになるだろうか?
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