2007年9月4日火曜日

感じたまんまNYC 4 ~パパラッチになってみた

7月21日の昼下がり、Greenwich Village(グリニッチビレッジ)地区をほぼ東西に横切るBleecker Street(ブリーカーストリート)を散歩中の出来事。

一軒の画廊の前に人だかりが出来ていました。見れば一目で分かる「パパラッチ」。本場のパパラッチをこの目で見たのは初めてでした。

彼らの特徴の一つはCanon(Nikonもあります)のデジタルカメラに70~200mm程度の望遠ズームレンズ。隠し撮りや高速連写に便利なのでしょう。

その先頭集団に潜り込んで、誰を狙っているか確かめようとしました。狭い店内には店主らしき中年男性と若い女性が3人が商談しています。とっさにコンパクトカメラを取り出し、「主人公」とおぼしき女性に狙いを付けてみました。しかし、思うようなアングルが取れません。背伸びしたり、しゃがんだりしているうち、隣にいたカムコーダーを持った女性カメラマン?に無言で突き飛ばされ、歩道に尻もちをついてしまいました。

写真↑は突き飛ばされる直前の画廊前の様子=7月21日午後2時43分、Bleecker & Charles Sts.で、RICOH Caplio GX100。

気を取り直して、取り巻きの男性に「誰なの?」と聞くと「モデルだよ」。「有名なモデルなの?」と聞いても、首を振り「名前は知らない」と言います。それでもこれだけのパパラッチがどこからともなく集まってきているところを見れば、よほどの大物を待ち伏せしていたとしか思えません。

写真→は突き飛ばされた直後の画廊前の人だかり=7月21日午後2時45分、RICOH Caplio GX100。

問題の女性が梱包された一枚の絵画(版画?)を手に店を出てきました。店の前はまた大騒ぎ。数え切れないほどのシャッター音が響き、フラッシュが焚かれます。すばしっこく女性の正面に駆け寄り、1回だけシャッターを押せました。金髪に色白の女性にフラッシュを浴びせたので、レタッチには苦労しましたが、ほぼ正面からサングラスをかけた素顔を収めることが出来ました。

それがこの写真です=7月21日午後2時48分、RICOH Caplio GX100。
いやあ、この後がまた凄まじかったです、、、パパラッチたちは早足で東に逃げる彼女を全力疾走で追い抜いて正面に回り込んではパチパチ、また先回りしてはパチパチ、、、。

記者時代に幾度となく、有名人や逃げる容疑者を同じように追いかけたことがありましたから、本能的に彼らと同じ行動を取っていました。

店頭に掲げられていた看板の文字を丸写ししておきます。

a clean,well-lighted place,inc. CONTEMPORARY PRINTS and FLAMING 363 bleecker street・new york city・255-3656


流行の版画と額装を扱うお店のようですね。150mほど追いかけて最後に撮ったのがこの写真です=7月21日午後2時50分、Bleecker & Christopher Sts.で、RICOH Caplio GX100。息が切れた私の耳にようやく彼女の肉声が届きました。
「今日はスッピンだから勘弁してよ!」
とても「スッピン」には見えませんでしたが。両脇に写っている女性はマネジャーか付き人でしょう。

翌々日、ミッドタウンのJCBプラザ・ニューヨークに立ち寄って、 米人スタッフに写真を見てもらいました。ほどなく「Anna Kournikovaだろう」。耳を疑いました。その場でPCを借りて検索してみると、確かに似ている。背格好も同じくらい。本当だったのでしょうか?

アンナ・クルニコワ(26=ロシア)といえば「20世紀最後のテニス界の妖精」というべき人気プレーヤー。今で言えば、マリア・シャラポワ(20=ロシア)かアナ・イワノビッチ(19=セルビア)といったところです。モデル業を兼ねているところが共通項ですね。

クルニコワは95年ツアーデビュー。ダブルスで16勝していますが、シングルス制覇は記録されていません。4大大会の最高成績は全豪8強(01年)、全仏=ローランギャロス4回戦、全英=ウィンブルドン4強(ダブルス、97年)、全米4回戦。14歳でプロ入りし、「早熟の天才」と呼ばれましたが成績は伸び悩み、03年の全豪を最後に4大大会の晴れ舞台からは姿を消しました。今は各地のエキシビションマッチでラケットを振るっているようです。

テニスプレーヤーとしての第一線を退いたとはいえ、ファッション雑誌の表紙を飾るなど、トップモデルとして活躍しています。半面、ゴシップも絶えないとか、、、この辺りがパパラッチの狙いであったのでしょう。

クルニコワについての詳しい情報は日本版ウィキペディア公式HP(英語)でどうぞ!

パパラッチといえば、今回、NYCで知り合ったカメラマンがいます。
彼の名はJayme de Carvalho Jr. 
38歳のブラジル人です。7~8年、ファッション雑誌にグラビアを担当した後、独立しました。名刺をクリックしてHPにアクセスしてみてください。パパラッチが本業とも思えませんが、、、

彼とはアッパー・ウエスト・サイド地区にそびえる超高級ホテル「Trump International Hotel & Tower」前の大通り(Central Park West)を挟んだセントラルパーク沿いで出会いました。Canon EOS 30D+70~200mm USMというパパラッチ御用達の機材を手に歩道のベンチに座り、通りを隔てたホテルの玄関に目を凝らしていました。

「誰かを狙っているのかい?」との私の問いをはぐらかすように、雑談を始めました。
「そのLEICAはどこで買った? ちょっと覗かせてくれよ。ずいぶん重いな」……
世間話の途中にもホテルにリムジンハイヤーが到着する度に、車から降り立つ人物にカメラを向け、バシャバシャバシャッ。モータードライブは使わず、流れるようにシャッターを切ります。カメラを見せてもらうと、すでにカウンターは380枚くらい刻まれていました。画質より量が勝負なのでしょうか?

「いま写したのどっかのセレブかい?」「いや、ただの家族連れさ」

「Jpegで撮ってるんだろう? なぜRAWをやらない」。バカげた質問をしました。
「RAWは面倒くさい。Jpegで十分だよ」

別れ際に交わした名刺の裏に、彼は携帯電話の番号を書いてくれました。再会できたらいいな、と思います。

別れ際に彼がつぶやきました。

「オレが本当に写したいのはスポーツ。それもサッカーだ。野球はつまらないじゃないか」

あっそうか、、、ブラジル人にとって大リーグなんて眼中にないんですね。

彼は有名人の隠し撮りなんかより、本当は陽の当たる舞台で腕を振るいたいんだな、、、パパラッチというのも、つらい稼業なんでしょうね。

追記:アメリカでは「パパラッチ」以外にも「カメラジャック」などの呼び名があります。

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