2007年9月23日日曜日

感じたまんまNYC 23 ~出産ブームがやって来た?

日本は史上まれな少子化時代に入った。

子どもが街から姿を消す。街の活気がなくなる。そして何より、公的年金をはじめとした社会保障制度を下支える担い手がいなくなることが国に与える影響を懸念する声は少なくない。

ところが、世界に冠たる「経済大国」、NYCではベビーカーを押すカップルの姿を頻繁に見かける。もしかして、NYCの女性、そのパートナーたちはキャリア一筋のこれまでの生き方とは別の価値観を持ち始めたのか?

NPO「アジアソサエティー」(http://www.asiasociety.org/index.html)に勤めるアン・カーカップさん(49)にNYCの子育ての現状を聞いた。

Q:ニューヨークの女性の、働きながら子供産み育てることについての関心&懸念事項は何ですか?
A:1)子供に良質なケア(主にデイケアやナニー)を提供することができるかどうかが最大の関心ごと。2)学校にいる以外の時間をどうするか(アメリカは学校にいる期間が短い-終了時刻が非常に早い&夏休みが長いので)

Q:小子化対策担当大臣に相当する人はいますか。また、行政に対してのリクエストは何かありますか?
A:基本的にアメリカは子供を産む産まないは個人の選択という意識が強く、行政がそれに関与することはない。よって、それに相当する大臣も存在しない。

行政のサービスに関していえば、アメリカは連邦国なのでサービスが(全てにおいて)パッチワーク的。つまり、住んでいる州や市により、提供されるサービスが異なる。たとえば、南部とかアラバマとか税収が貧しい州ができるサポートは限られているが、産業が栄えている北東の州のサポートはより優れている。(共和党優位の)RedStateより(民主党優位の)BlueStateの方が(大きい政府を掲げているので)サポートが優れているということは全体的にあるだろう。

(だいたいにおいて)子育てにおいて負担がかかるのは、行政のサービスを付与されにくいミドルクラス。彼らは全て個人的に何とかすることになる。

彼らの選択肢:家族の手伝い(Family Involvement)-プライベート・デイケア(施設で子供たちを預かる)-ホーム・デイケア(個人拓で子供たちを預かる)-幼稚園-ナニー

行政に何かリクエストするとしたら、ヨーロッパモデルにならった行政サポートが欲しい(スウェーデン、フラン、ドイツ。特に北欧)。


Q:NY(アメリカに?)公立デイケアはあるか。また、デイケアは免許制ですか。
A:公立デイケアは低所得者向けにあるだろう(アンの知り合いに使用している人はいない)。教会に付属するデイケアは安くて質が良いため、ウェイティング・リスト待ちになる。

Q:だいたいのデイケア/ナニー費用は?
A:ナニーには二種類ある:Feeから税金を払うナニーと、移民(不法滞在も含む?)など、Feeから税金を払わない働くナニー。税金(場合によっては保険)込みのナニーだと1時間15ドルほどだが、これは交渉次第。例えば、休んでもらう日もFeeを支払う、月ごとの均一料金制にすると割安になる(アンはこれを使用)。

<注記>カーカップさんは、子供が病気の時も面倒を見てもらうことができ仕事を休まなくて良い、ナニーを使ったため、デイケア代に対しては特段詳しくない。デイケアの質に疑問を感じていたとのこと。
(追記:一般的に、子供が複数の場合はナニーの方がデイケアより圧倒的に割安です。うちの20ヶ月の子供のデイケア代は週5日、7:30から6:30まで見てもらえて370ドルほどです。プログラムは非常に充実しており、同じデイケアには遠方からバスに乗って子供を預けにくる日本人の親もいます。)


Q:デイケアは免許制か?
A:こじんまりと個人的にやっているところで例外はあるかもしれないが、基本的に全てのデイケア(プライベート&ホーム)は免許制。NYCが発行するデイケアのリストもある。

<カーカップさんの職歴>イギリスからアメリカにきて18年。
1)Photo Editor:大学の教科書を作ったりするフリーランスのエディターのもとで、零細出版社のために働く
2)ESL(http://d.hatena.ne.jp/keyword/ESL)の先生
3)御主人と働く
4)アジアソサエティーで働く(15年間)。この間に2児をもうける

Q:子供を持つ決意や、子育てしながら働くことについてはどうですか。
A:アジアソサエティーは100人以上の従業員がいて(追記:世界的に見たらもっと大規模)、NPOといっても殆んど一般企業に近い機関。 Benefit(産休、健康保険など)もしっかり整備されている。これが子供を持つ決意をするのに役立った。周りのBenefitなしの)フリーランスの友人を見ると、個人で健康保険に加入したりして、非常に大変そう。こんなことは行政のサポートが手厚いヨーロッパでは問題にはならないだろうに。

Q:キャリアのために子供を持つことを諦めた友人はいますか?
A:いない。それは多分彼らが私の友人だからだろう。

Q:アジアソサエティーでどう子育てと仕事を両立させてきましたか?
A:ずっと培ってきた信頼によって得られるフレキシビリティ(勤務時間の短縮)。ナニーの存在。理解のある(男性の)上司の存在。(一般的に男性上司の方が女性上司より理解があるというか、やりやすいとのこと)

Q:一般企業の産休/育児支援体制についてはいかがですか?
A:アメリカでは条件が合えばFmaily and Medical Leave (アメリカ労働省により保証されている12週の無給休暇http://www.employer-employee.com/fmla.html)を取ることが可能。しかしSmall Business はこれに準拠しない。
これを取得するのは女性が多いが、男性も取る。これ以上のBenefitを受けられるかどうかは勤務する企業によりけり。個人的に(上司やHRと?)交渉したりすることもできる。

<コーディネーター・Mari さんの感想>
伝統的なアメリカの保守派的感覚から、子供を産み育てるという個人的なことに行政が関与するべきものではない、という考えが徹底されているのに気づき、とても興味深いインタビューでした。(良く考えたら、ヘタにアメリカで「少子対策」とか言ったら、選挙で女性票もらえないですよね。)

ウーマンリブの時代を経て職場での男女平等がほぼ実現され、子供を産んで育てる女性をいかに上手く使うか、企業が独自で考えてきた期間が日本よりかなり長いのでしょう。Work-Life関連のセミナーの数は大変多く、最近もそのうちの一つにアジアソサエティーのBusiness部門のDirectorが出席しました(アジアソサエティー独自でも5月にWork-Lifeのセミナーを行っています)。

取材日時
7/20 5:30-6:30pm@Jack Deutsch Studio (48 West 21st St. 12F New York, NY 10010)Anne Kirkup, Administrative Associate, Cultural Programs, Asia Society http://www.asiasociety.org/index.html

関係資料
出生率についてのリンク:
"New York City Birth Rate Plunges"the Sun, December 21, 2006. http://www.nysun.com/article/45536

New York County Birth Rate (95-2004, 2006、11月Updated)http://www.health.state.ny.us/statistics/chac/birth/births60.htm

Special thanks to Ms. Reiko (as a interpreter) & Ms. Mari Ueno (as a coodinater).

写真はアン・カーカップさんご一家(Pluto the dog, George Deutsch-Kirkup=13, Rosamund Rosamund Deutsch-Kirkup=9, Anne Kirkup=49, Jack Deutsch=50, from the left)

RICOH Caplio GX100
SILKYPIX Developer Studio 3.0

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