2007年9月20日木曜日

感じたまんまNYC 20 ~肥満大国アメリカ③=意外な「犯人」捜し

写真はマンハッタン西部を南北に縦断する地下鉄A線(ジャズのスタンダードナンバー「A列車で行こう」<Take the 'A' Train>のモデルになった「8th Ave. Express」と同じ路線を走る各駅停車C線「8th Ave. Local 」)の車内=7月22日午後1時37分、34th St.-Penn Station駅付近で、RICOH Caplio GX100。本文は写真とは関係ありません。地下鉄構内はテロ対策のため撮影厳禁です。これは誤ってシャッターを押してしまっただけです。

最近、肥満に関する興味深い学説が二つ、目に留まったので紹介しておく。

●肥満は「伝染」する?

太った友人を作ると自分も太る(7月の学会誌「the New England Journal of Medicine」掲載)――

米ハーバード大医学部のニコラス・クリスタキス教授は12,067人の体重を71~03年まで追跡調査。その結果、太った友人(BMI>30)がいる人は57%の確率で太るという。

兄弟姉妹間では40%、配偶者間では37%だったとか。家族がそろって肥満傾向になるのは、食生活や体質で説明がつきやすい。

しかし、この「感染力」は友人間の方が目立って強かった。同教授は「太った親しい友人がいると、肥満が悪いことではなく当たり前のことだ、という認識が『伝染』、肥満に対する抵抗感が薄れるのではないか」と分析する。同時に、痩せた友人と付き合っても、自分が痩せることはないという「反証」も掲げている。

同教授は「アメリカで肥満人口が増えている(実際は00年~ほぼ頭打ち)のも、これで説明が付く」と言う。

●肥満はウイルスの仕業?

太った人は特定のウイルスに感染している(8月20日にボストンで開かれた米化学会で発表)――

こちらは米ルイジアナ州立大グループの説。ウイルスの名、それは「アデノウイルス36」。

アデノウイルスは血清型によって6群51種に分類される。肺炎や咽頭結膜熱(プール熱)、胃腸炎、性病など、半数ほどが何らかの病気の原因として特定されているが、働きが分からないものも多い。

アデノウイルス36には「前歴」がある。00年に米ウィスコンシン大の研究チームが鶏やハツカネズミに感染させたところ、脂肪を2倍蓄えたとの論文を発表。以来、肥満との関連が疑われてきた。アメリカの肥満者313人の感染率が30%だったという調査報告もある。

ルイジアナ州立大グループは美容整形手術の際、脂肪吸引で採取した人間の脂肪組織から万能細胞である幹細胞を抽出。アデノウイルス36を加えた半数以上が脂肪細胞に変化したという。

ウイルスで太る確率が高いのなら、ワクチンを作って接種すれば肥満も防げると言わんばかりの学説だ。しかし、同グループは釘を刺すのを忘れない。

「ワクチンを作っても、既に太っている人には効果はないだろう」

インフルエンザ患者にワクチンを打っても、時既に遅し、ということか、、、

●低所得者ほど太る?

これは学説ではない。アメリカで一般に言われている定説のようなものであり、私見でもある。

「太る」というと、日本ではグルメブームに乗って食べ歩きを楽しむ運動不足の人々のイメージが浮かぶ。グルメや食いしん坊を自称するにもお金はかかる。アメリカで所得の低い市民が手軽に手を出せるのは、ファストフードに代表される高カロリーのジャンクフード。安くて満腹感がある。単純な理由だ。

これは1980年代から中高年以上を中心に顕著な傾向だという。

彼らは前回紹介した弁護士のように、カロリーコントロールを計画的に出来ない状況にある。ジムに入会して汗を流す経済的な余裕はない。加えて、栄養学的な知識も豊富と言えない。

旅行者としてアメリカを訪ねると、私を含めて本当の意味での低所得者層の人々と親密になる機会はほとんどない。繁華街で太っている人を見かけるのがせいぜいだ。

所得の多い少ないが、命を左右する。メタボリックシンドロームに陥るかどうかのカギを握る。そればかりか、治療段階でも格差が生じる。

アメリカでは公的保険制度はなく、分野別の任意保険に加入するのが一般的だ。本当の低所得者は医療費無料、という制度を設けている州(カリフォルニアなど)もあるが、国民皆保険制度のないアメリカにおいて、これは深刻な問題ではないか。

次回はかく言う私の実体験でこのシリーズを締めくくろうと思う。

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